『風少女』 『依頼人は死んだ』

ひきつづき、ノミネート作のご紹介です。ミステリ2作。

『風少女』樋口有介東京創元社創元推理文庫

柚木草平シリーズで知られる樋口有介さんのデビュー2作目にして、直木賞候補にもなった作品です。まぁ、そんなこと知らずに読んだんですが・・。


父が危篤のために帰省した斎木亮は、中学生の時に憧れていた川村麗子の死を知らされます。彼女の死に疑問をもった斎木は死の謎を解き明かそうとするお話。20年程前に書かれた作品ですが、時代をあまり感じさせません。


ミステリなのに、斎木の語り口が軽快だからか、どろどろとした暗い感じではなく、むしろ爽やかなかんじがします。あまりミステリが好きでない方にも、青春小説のような気分で読んでもらえる後味の良い作品です。


【 紀伊國屋書店 MOVIX京都店 西尾 推薦 】



依頼人は死んだ』若竹七海/文春文庫

天才的な頭脳を持った冷酷な殺人犯、なんかでなく、ごくごく普通の隣人の自覚の無い悪意を堪能できます。とにかくイヤな奴を書くのが上手い!!絶対身近にいてほしくないし関わり合いたくない!!と思うことは間違いないですが、なんかいそう。


女流にありがちな(偏見?)湿度の高い人物描写はなしで、カラッとサラッとかわいた感じなので読後感は意外とさわやかです。主人公の女性探偵(契約社員)葉村晶の組織に頼らず、常に一人で立っているところが格好良いです。


連作短編集ですが、ひとつずつ最後の一行まで手を抜かず読むことをおすすめします。


【 恵文社西大路店 加藤 推薦 】